◆展覧会についての最新情報は、各ギャラリーのサイトでご確認ください。

イムラアートギャラリー京都 imura art gallery Kyoto

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田中麻記子
「Duo / Pink Sun」


《Pink Moon》
46.3×37.5cm, Oil on Canvas, 2023

2023.5.20 (土) ~ 6.9(金)

このたび、イムラアートギャラリーではフランス在住の作家、田中麻記子の個展「Duo / Pink Sun」を開催いたします。

田中は、女子美術短期大学を卒業後、2013 年に文化庁在外派遣制度にて渡仏、以降、フランスと日本を中心に活動してきました。本展では、二人の女の子を描いた油彩作品をメインに、展覧会タイトルでもあるDuo(デュオ)という言葉をテーマに制作した新作を発表いたします。

Duo は、ギリシア語で2 を意味するδύο(ディオ)が語源とされます。1 足す1 が2 になるように、デュオは、2つのものや人による構成の最小単位です。田中の住むフランスでは、たびたびピンクの夕焼けを見ることがあると言います。それは、湿度や光の波長のバランスによって起こる現象のようですが、人間関係においても「ふたり」という関係性は、それぞれの波長やバイオリズムによって周りの景色を変える力があると田中は感じています。「友達、恋人、何気ないとなりにいる誰か、家族、通り過ぎたひと、どんな相手でも、相手がひとりいるだけで当たり前ですが自分の景色と温度はどんどん変化することができます。」という作家の言葉にもあるように、そのような当たり前の不思議をフランスの空模様とからめて描きます。

画面の中の女の子たちは、お互い意識しながらも、それぞれの個人として存在しますが、それでも二人きりという世界で、どこか寄り添うように描かれています。フランス近代絵画を彷彿とさせるような豊かな色彩で描かれる田中の新作を是非ご高覧ください。


Duo / Pink Sun

2、に、two、deux 、due、
Duo、ふたり。
時には鏡のように。
影響しあう、思いやる、散らばる、溶け合う。
空の光のバイオリズムのように、
関係性は揺れ動き、繊細な色彩を放つ。
離れ離れになっては、また新しく出会う。
無数のDuo の放つ色彩は、空に反射して、
世界はピンクの太陽の光でおおわれる時がある。

田中麻記子

京都市左京区丸太町通川端東入東丸太町31 Tel:075-761-7372 休廊日:日・月曜日&祝日

同時代ギャラリー DOHJIDAI GALLERY of ART

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〈ギャラリー〉

 

貴志カスケ
-流れゆく折々-


2023.6.6(火)〜 6.11(日)

私は記録が下手だ。作品のリストを作るのもままならぬ。
そんなええ加減な人間が50年以上彫刻を創って来た。

今回、個展ができる機会をもらって、
アトリエに転がっている作品の展示である。
なんら脈絡のない作品が並ぶ。

一つの事を息長く追求出来ないのか、
飽き性なのか、定かではない。

一貫性のない作品が並ぶ。
心情的には平和と民主主義をこよなく愛する人間で、
そのために大いに活動もして来た。
そんな心情がチョットでも現れ、
感じてもらえる作品があれば嬉しい。

 

長谷川泰子個展
「無計画な旅」


2023.6.13(火)〜 6.18(日)

世の中の動きがなんとなく退屈で、面白くない。こんな時はどこか知らないところに行きたい。
あてのない無計画な旅に出たい。歳をとって足腰は弱り、体を動かすのも面倒になってきたが、それでもどこかに行きたい。どこかに行きたい。

 

今村敬子 型染テキスタイル展


2023.6.20(火)〜 6.25(日)

動植物や自然現象などを感じさせる形を作り、それを反復したデザインのテキスタ ル作品を染めています。
同じ形を繰り返すことでリズミカルな心地良さを感じ、同じ形でも染める色を変え ていくことで、風景の変化が現れてくるので、私は日本の伝統的な染め技法の一つの『型染め』で制作しています。
今回のモチーフは花びらや葉のようなものです。
初夏の陽射しと爽やかな風が吹きとおるギャラリーで、ゆったりと楽しめる空間を作りたいなあと思っています。

京都市中京区三条御幸町南東角 1928ビル2階 Tel:075-256-6155 休廊日:月曜日

エンアーツ eN arts

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showcase#11
“Definitely Local”
curated by minoru shimizu
いくしゅん(機材協力:CANON)


untitled 2023
インクジェットプリント
©いくしゅん

2023.4.14(金)〜 5.14(日)
会期中の金・土・日 12:00-18:00

アポイントメント 承ります
KG + 2023参加

2023年4月14日より 毎年恒例となりました清水穣氏のキュレーションによる写真・映像に特化したshowcase展を開催します。今回で11回目となる「showcase #11 “Definitely Local”」には いくしゅん が選ばれました。

「生活の中で『写真にしたら面白い』と思った場面をデジタルカメラで『普通に撮る』」というのが、いくしゅんの基本スタイルです。アーティストステイトメントも無いし、コンセプトも特に持っていないという いくしゅんですが、特徴的なのは被写体が「動く/動いているもの」であり、その被写体の動きを予測しつつ、絶妙な瞬間を切り取り、作品としているところでしょう。いくしゅんの 写真の画面上 に現れているのは、私たちが日々の生活の中見逃しているシーンであり、彼の言う「普通に撮る」は普通の人の普通ではないのかもしれません。

本展では300点に及ぶ作品を展示します。第一展示室では、自宅近くの行きつけの店・友人宅やラグビー場までの道中・ご実家の近所などで撮影された作品、第二展示室では、上海・重慶など中国旅行中に撮り溜めた作品、地下のブラックキューブではスマートフォンやデジタルカメラで撮影した10秒〜2分の短い動画をつないだ映像作品(約30分) を紹介致します。作品に潜むストーリーや、見ているようで実は見えていない日常での出来事を探しながら、一枚一枚の写真を隅から隅までお楽しみ下さい。

皆様の御来廊をお待ちしております。

eN arts


showcase #11 “Definitely Local” curated by Minoru Shimizu
帰ってきた いくしゅん

いくしゅん(1980- )は2009年と2011年にキヤノン写真新世紀で佳作を受賞、2013年にshowcase #2に登場し、2015年、写真集『ですよね〜』(青幻舎)で注目を集めた。が、その後は、ブログに散発的に日々の写真を載せるほか、発表の機会に恵まれてきたようにも見えず、沈黙のままに8年が経ってしまった。ブログに掲載された近作を見れば、快と不快が同時に押し寄せるそのパワーは健在なので、showcase #11では久しぶりにいくしゅんに再登場してもらおうと思い連絡したところ、快諾してもらえた。

いくしゅんの写真は、いわゆるストリートスナップのスタイルを取っている。それはたしかに「決定的瞬間」を映し出し、「トマソン」あるいは「VOW写真」の要素を備えてはいるが、決してそれらと同じにならない。四角いラグビー場に散ったプレイヤーたちの個々の動きを読むフルバックのように、世界を「切り取る」四角いフレームの隅々まで観察し、次の瞬間を読んでシャッターを切る運動神経や、被写体をさまざまに「切断」する一種の暴力性、主となる被写体が風景やオブジェではなく、基本的に動く物(人間と動物)である点、そしてその動物や人間の視線に対する敏感さは、ギャリー・ウィノグランドに通じる質であるが、ウィノグランドが多用したティルト(カメラを傾けること)をいくしゅんは決して用いないし、ウィノグランドの写真がときに見せつける階級や人種の激しい格差とは対照的に、いくしゅんの写真は、日本のフラットな日常世界のなかの、小さな弛みや綻びを、飽きることなく執拗に映し出していく。その弛みや綻びに、なにか普段は隠れている真実の世界が現れるわけではない。いくしゅんの写真が映し出すのは、世界はつねにどこか弛み綻んでいるという事実だけである。

清水 穣

京都市東山区祇園北側627 円山公園内八坂神社北側 Tel:075-525-2355 開廊日:金・土・日曜日

ギャラリー16 galerie16

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藤友陽子 銅版画展


2023.5.30 (火) ~ 6.10 (土)

風景を描く日が続いています
いつもの道にふと見る濃い影を探しながら

藤友陽子

 

THE GREAT WALL 1963-1970
-開廊時の作家の表現-


2023.6.13 (火) ~ 7.2 (日)

岩田重義 柏原えつとむ 榊 健
庄司 達 高﨑元尚 中馬泰文
寺尾恍示 野村 耕 橋本典子
平田洋一 三島喜美代 宮本浩二

植松奎二 ジェームズ・リー・バイヤーズ
林 剛 三島茂司

1962年9月末、ギャラリー16が開廊した頃は、国公立の美術館はまだ少なく、画廊もまた現代美術に特化した発表の場としては関西圏には一つとしてなく、知り合いの作家などはいつも発表の場がない事を嘆くという現状であった。ギャラリー16はそのような作家からの熱気を受けて開廊した。時代は1960年代、世の中は高度経済成長に浮かれ、表現の世界も多様化が進み、アートの現場・画廊には美術の概念そのものの殻を破る表現が多く現れるようになった。

その翌年、大阪に「画廊あの」が出来、その次の年 京都に「紅画廊」、さらに次の1965年には「信濃橋画廊」が大阪に開廊することにより、そのような美術現場の状況はこの4軒の画廊がしばらく引き受けたといっても過言ではない。

国立近代美術館京都分館は1963年4月に「現代絵画の動向」展で開館し、1964年から1970年まで「現代美術の動向」展と名を改め絵画以外の表現もとり込んで展覧会が開かれた。

その頃は若い作家の作品動向をみせる展覧会が国立の美術館で開かれること自体が画期的で、どの年の動向展にも、出品依頼を受けた作家は心躍らせ、チャンスを目一杯生かそうと張り切っていた事を思い出す。

前述の状況を経験したギャラリー16は、当時 画廊での作品発表が国立近代美術館の動向展につながった作家の内、12人の展示可能な作品を構成すると共に、動向展には出品することはなかったが、ギャラリー16として、はずせない作家・植松奎二、ジェームズ・リー・バイヤーズ、林剛、三島茂司の4作家の作品または記録写真などを展覧する企画展、「THE GREAT WALL 1963-1970—開廊時の作家の表現—」として開催する。


■■■トークイベント■■■

展覧会のサブタイトルー開廊時の作家の表現ーにあるように、ギャラリー16が開廊し美術と係りをもち始めた頃、時の差は少しあるものの、平野さんも又京都市美術館の学芸員として、当時の作家の表現と向き合われた頃だと思う。
そして、1963年4月に開館した京都国立近代美術館では、今年60年の節目として開館時の「現代美術の動向展」をベースにした「Re:スタートライン1963-1970」が担当の牧口さんにより開かれている。彼女も当時の美術の一部に触れる事となり、三者三様に経験した事柄など話し合うというトークイベント。

平野重光(元京都市美術館学芸課長)
牧口千夏(京都国立近代美術館主任研究員)
井上道子(ギャラリー16 オーナー)

日時:2023.6.24(土)14時〜16時
会場:ギャラリー16
定員:30名(先着順)
申込開始日:2023.6.1(木)〜

京都市東山区三条通白川橋上ル石泉院町394 戸川ビル3階 Tel:075-751-9238 休廊日:月曜日

ヴォイス・ギャラリー MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w

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坂本優子
「かえりみる風景」(絵画)


「境界」2023年
50×45.5cm
キャンバスにアクリル絵具、インク

2023.5.27(土)〜 6.11(日)
*会期中の水~日曜:13~19時、最終日13~17時
*月・火曜休み

約3年ぶりに個展を開催することになりました。
前回の展示は2020年2月5日~16日で、ちょうどその頃未知のウイルスが人々の間で話題になりはじめていました。
私もニュース等を見ながら不安な気持ちで見守っていましたが、でもどこか楽観的で、そのうち暖かい季節がやってくればすぐに解決するだろうと考えていました。
当時の自分の個展についても、2月の寒い時期ではなく、もう少し暖かい季節になってからやればよかったな、そうすればみんな安心して来ることが出来たのに、とぼんやり考えていた事を今でも覚えています。(その後の状況については言うまでもないですが…)

今回の展示では、この約3年間で描きためた作品を展示します。
2021年3月から2022年2月までの1年間は、毎月6枚 葉書サイズのドローイングを描きました。
日々の生活の中でおこった事や、ニュースを見て感じたことなどを基に描いた日記のような作品です。
タイトルと共に日付を記しました。当時の状況などを思い出しつつ観ていただければと思います。
その他、長年私が好んで描いている動植物のペインティングやドローイングを展示します。
私達が不自由な暮らしを余儀なくされている間も変わらずにあり続けた彼らの存在には随分となぐさめられた気がします。

どうぞご覧ください。(坂本優子)

京都市下京区富小路通高辻上る筋屋町147-1 Tel:075-341-0222 営業時間:11時~19時 休廊日:月・火曜日

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA

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<@KCUA 1,2>

 

特別展
「Slow Culture #kogei」


鈴木祥太
《白花蒲公英-都市の養分-》2022
銀、金(金銀ともにKOGEI Next 都市鉱山資源)、
銅、洋白、緑青


西條 茜
《甘い共鳴》2021
陶、ロープ


つのだゆき
《ネッタイシマカ》2021
ガラス

2023.4.22(土)〜 6.25(日)

企画:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
主催:京都市立芸術大学
協力:ARTCOURT Gallery, 古美術 鐘ヶ江
出品作家:石塚源太、隗楠、𡧃野湧、織田隼生、菊池虎十、木田陽子、國政サトシ、西條茜、佐々木萌水、佐々木怜央、鈴木祥太、つのだゆき、土岐謙次、西久松友花、彦十蒔絵、デヴィッド・ビランダー
美術:熊谷卓哉
音楽:小松千倫


本展は2021年6月19日(土)–2021年8月15日(日)に開催された特別展「Slow Culture」に連なる展覧会企画です。

「Slow Culture」とは、展覧会というメディアの在り方を今のリアリティのなかで捉え直すためのプロジェクトです。この「Slow」には大きく二つの意味が込められています。一つは、ゆっくりとした速度自体を指す「Slow」、もう一つは効率や利便性を重視して物事をFast に進める社会へのカウンターとしての「Slow」です。そして、「Art」ではなく「Culture」という言葉を使うのは、表現行為を専門的な芸術の文脈だけに閉じ込めず、地域社会における個人の生活と地続きなふるまいの痕跡として地に足ついた視点から広く捉えたいという想いからです。

第1弾では、80年代後半から90年代前半生まれのアーティストを特集し、描き手の身体とダイレクトに結びついた物質的な実践としての「絵」に焦点を当て、第2弾となる本展では「工芸」を切り口に展覧会を構成しています。


SlowなCultureとしての工芸とは一体なんだろうか?

日本の工芸は、長い歴史の中で培われてきた素材の力を最大限に引き出す伝統的な技法と、洗練された手仕事の美しさで人々を魅了してきました。素朴で美しく機能的な日用品を生み出す工芸や、高度な技術で美の粋を極める美術工芸、実用性にとどまらない独自の表現メディアとしての工芸など、多様なあり方で展開しながら作り手の美意識やその時代の新しい思考を反映し続けています。作品の使用や鑑賞の段階においても、思いがけない手法で情景を演出する「見立て」の文化や、モノと人と場の相互作用から生まれる新たな創造性が見られ、これらは日本の工芸に独自性をもたらす重要な要因であると考えられています。

本展「Slow Culture #kogei」では漆・陶磁・染織・ガラス・金工などの工芸あるいは工芸的要素を取り入れる16名(組)の作家を取り上げ、現代の思考や感覚、新しい素材や技術、そして伝統を融合させた表現を紹介するとともに、自然環境や社会の問題に他ジャンルの専門家と連携して向き合う今日的な工芸観にも注目します。展示空間はデジタルの概念を引用して独自の彫刻観を探求する美術家の熊谷卓哉との協働により設計。会場に流れるサウンドを、美術と音楽をまたいで多才に活動する小松千倫が演出します。デジタルテクノロジーの加速度的な進化により、リアルとバーチャルが融け合う社会の状況を着想源とした「現代を表象する場」を設え、モノと場の調和や対比を生み出す実験的な空間に作品を展示します。

京都市中京区油小路通御池押油小路町238番地の1 Tel:075-334-2204 休廊日:月曜日

MORI YU GALLERY 京都

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黒田アキ
「NEO SELF- PORTRAIT」


Aki Kuroda
"Neo Self- Portrait"
2023, 194×130.3cm,
acrylic on canvas

2023.4.8(土)— 5.21(日)
opening reception: 4.8(土) 15:00 – 17:30
休廊日:4.29 (土) – 5.5 (金)

モリユウ ギャラリーは4月8日(土)– 5月21日(日)まで、黒田アキ展「NEO SELF-PORTRAIT」を開催します。本展では黒田の新作絵画を展示いたします。みなさまどうぞご高覧ください。

黒田は、顔をモチーフにした作品をここ数年描いてきた。黄色やウルトラマリン・ブルー、水色といった鮮やかな色使い、とても激しいストロークによって描かれたその顔は、幼少期にみた書籍『ミノトール』からの影響が大きいと彼は語る。
30年前からすでに、ミノトールは黒田の中心モチーフとして描かれていた。

1993年東京国立近代美術館での個展に出品された『Minosideral 1』(ミノシデラル)』(Minos「ミノトール」とsideral「恒星の」を組み合わせた造語)は、3連からなる絵画作品である。白い地の上に描かれた真っ黒なミノトールを中心に据え、白い隕石が散りばめられたような印象を与える絵画2 点が両脇に配置される。勇者ベルセウスによって殺されたミノトールが星になり、暗黒のブラックホールから離れた場所に存在する。Minosideralは、絵画面では黒一色に塗りつぶされている。ただ、黒一色といってもそれは幾重にも重なった線の「縺れ」であり、解けた線の縺の端は宇宙空間を通り、果てはブラックホールへと繋がっている。またその線は、ミノトールが幽閉されていた迷宮と外の世界とを繋ぐアリアドネーの糸でもあった。
1990年代後半に、黒田は『Minotauromachine (ミノトロマシーン)』という作品を描いている。黒田によって宇宙に浮かぶ星へと復活したミノトールは、流星のように落下した。その後、黒田は瀕死のそれを手術するかのように機械と繋ぎ合わせて人造人間のように仕立て上げたのだ。

神話では、ミノス王の后であるパーシーパエーが名工ダイダロスに白い雌牛の模型をつくれと命じ、彼女はその白い雌牛の模型に入り込み、雄牛と関係を結び誕生したのがミノトールであった。黒田は、神話の登場人物すべての役を演じているかのように見えてくる。さらに、主人公たるミノトールとも交わったともとれるだろう。そして出来上がったものが2010年前後のシリーズであった。そのシリーズは白黒で表現され、青い目が埋め込まれていた。ミノトールの神秘性が非常に際立った作品だった。

2017年頃から制作され始めた『SELF-PORTRAIT』は、黒田自身の顔が前面に押し出され、もはやミノトールは一部になっている。それらは親近感と怖さの間で揺れ動きながら鑑賞者に迫ってくる。次に制作された『Super self-portrait』シリーズでは、顔だけにフォーカスしたものからズームアウトされ、全身(figure)が描かれたものだ。figureは浮遊感とともに空間に浮かんでおり、その片手にはSelf-portraitが切り取られたように抱えられている。そしてその空間の背後を時折、兎が顔を覗かせる。ミュータントのような兎(Lapin)だ。空間と時間をかき回すかのようにジャンプするLapinは、また別の作品へと我々を誘う。ある都市の風景だ。人や動物やミュータント、怪物。異空間へと繋がるトンネルや道路、小道、塔に城が混在しながら、得体の知れない黒い竜巻のようなものが描かれている。ブラックホールであろうか。すべてがそこに吸い込まれそうになるのだが、抱え込まれ、逃れつつも存在する黒い円筒は、『Super self-portrait』のfigureの変化した姿にもみえてくる。すべてが綯い交ぜになり、線のように縺れた結果できているcosmogarden(宇宙庭園)だ。

遠くに顔がポツンと存在しているのがみえる。それを 「NEO SELF- PORTRAIT」と黒田は名付けた。いつしかそれはミノトールをも超えて、黒田自らの世界へと我々を誘う。黒い髪の毛はそこだけ独立して面となり、黒い奥行きのある夜となり、そして時間のある異次元の空間へと広がり始める。闇が訪れ、顔はラパン(Lapin)に変わり、その目はいつしか宇宙に変わり、我々鑑賞者はそこに誘われ、色々なミュータントに出会うのだ。

京都市左京区聖護院蓮華蔵町4-19 Tel:075-950-5230 休廊日:月曜日・火曜日・祝日

ギャラリー ヒルゲート  Gallery Hillgate

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〈1・2 F〉
17seasons 【17人の現在】

2023.6.6 (火) ~ 6.11 (日)

京都市立芸大で‘80 年代に学んだ作家たちの作品展 (日本 画・洋画・工芸 他)

 

〈1 F〉
木村正恒・油彩・素描展 京都好日

2023.6.13 (火) ~ 6.18 (日)

 

〈2 F〉
星のおくりもの
しみずやすこ 個展

2023.6.13 (火) ~ 6.18 (日)

音から感じる色、色から感じる味、手触り、温度、香り...。日々感じる感覚から生まれる作品たち。 静寂の夜空へ望遠鏡を覗けば、深く広がり輝く無数の星々と神話。四季の星空の言の葉を円形の作 品に込めました。“春夏秋冬の星座図の連作”を中心に展示いたします。

 

〈1 F〉
鳥海太郎 版画展

2023.6.20 (火) ~ 6.25 (日)

 

〈2 F〉
小山剛男 展

2023.6.20 (火) ~ 6.25 (日)

「圧倒的な幼児の絵に刺激されて」
幼児の絵を魅力的に感じるのは、なぜだろう。
色づかいの未熟さや間違いだらけの形とは対照的に、空想力や想像力の豊かさを遊び感覚で楽しん でいる。大人の目にそれが新鮮に映るとしても幼児にとっては、きわめて単純で複雑で繊細なもの でもない。
出来上った絵を褒めてもらって益々楽しく描くようになる。幼児の絵が面白く感じるのは描き出す 空間が大人の固定した視覚を刺激するからにほかならないと思う。そして幼児は大人のノスタルジ ックな気持ちや純粋な心を羨ましく思う事を知らず、つぎつぎと作り出してその時期の最高傑作を 生み出す。
幼児が成長していくと形を正確に捉えるようになり写真に近づけた絵を描こうとする。目の前にある対象を正確に伝えたいという本能か、大人に賞賛される事に喜びを感じるのか。それも一つの通 過点だが、幼児期にあった自分の世界が失われ、私にとって、たいがい面白くなくなりダメになっ てしまう。
成長するにつれて人はだれでも失っていくものです。その代わり別のものを手に入れるのです。ア ンリ・マチスの言葉に「芸術家はまるで初めてそれらを見たかのように、すべてのものを見なけれ ばならない」
まさに幼児の感覚に通じるものがあると思う。私も喪失したものを取り戻そうとしているのか。 興味のある事を 1 つ描いて、描きながら構図を修正し色を直し、絵がどんどん変わっていく。その 行為が楽しく、又なにか面白くない時は、たぶん幼児のような無規則な線を入れたり全く無関係な ものを入れたりして、インスピレーションとスピードを大事に一瞬で思いついたまま描いたり消し たりをくり返してやっと満足する。
思いついたらすぐ形にしたくなるので私の制作部屋には、アクリル絵具、水彩絵具、墨、クレパス、 パステル、ドライバー、ルーペ等がちらばっている。材料にはさして拘らない。たまたま近くにあ るもので描く事も多い。しっくりこない時には、その部分を隠すために新聞紙を貼ったり、なにか もの足りなく思ったときには、意味のない文字を入れたりする。日本語だと意味が前に出て しまうので、アルファベットをマチエールとして入れる事が多い。
昨今、ロシアによるウクライナの侵攻等、地政学的リスクが高まり、平和が脅かされています。人 類は恐竜が栄えた年月のたった 0.13%しか地球上に存在していません。人類が原因で地球環境の 破壊は決して許されるものではありません。「生物の敵が人類」にならない様に祈りたいものです。
今回の展覧会で平和をテーマにした作品も発表しますので、どうぞ御高覧下さいますようお願い致します。

 

〈奥庭空間〉
江藤佳央琉 石彫 自選展

2023.1.10(火) ~ 6.25 (日)

過去から未来へ・・・
 失望から希望へ・・・
  現世から来世へ・・・
何処から何処へ・・・

京都市中京区寺町通三条上る天性寺前町535番地 Tel:075-231-3702 休廊日:月曜日

京都芸術センター Kyoto Art Center

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<ギャラリー北・南>

 

ニューミューテーション#5
倉敷安耶・西村涼「もののうつり」


倉敷安耶|《Transition # 九想図》
ミクストメディア, メディウム転写
2022


西村涼|《"うち"へ還る2》
ホワイトワトソン紙, 銅版インク
2022
撮影:花戸麻衣

滞在制作:2023.5.20(土)〜 6.23(金)
※6.8(木)臨時休館
展示会期:2023.6.24(土)〜 7.30(日)

企画:中谷圭佑(京都芸術センター)
主催:京都芸術センター

関西圏の若手作家を取り上げる「ニューミューテーション」の第5弾

アーティストたちの制作手法に着目し、その独自のミューテーション(突然変異)の表現を探ることを目的として2018年より始まったシリーズ企画「ニューミューテーション」。これまで京都芸術センターは本企画において、関西圏の芸術系大学を卒業 / 在籍し活動中の若手作家を数多く取り上げてきました。第5弾となる本展では「転写」という手法に着目し、滞在制作と展示を通して倉敷安耶と西村涼の2人を紹介します。

企画概要:
本展で紹介する倉敷安耶と西村涼は、ともに「転写」という技法を用いて作品を制作するアーティストです。一般的に転写というと、イメージを綺麗に写し取ることや、正確な複製の手法として捉えられることが多いですが、しかし2人の制作手法はその真逆の特性を持ちます。倉敷と西村の「転写」はむしろ、物理的なものから観念的なものまで、あらゆる外的要因が制作の過程で非可逆に作品へと引き受けられ、転写される元のイメージと混在していく「うつし」の技法なのです。

倉敷はこれまで「メディウム転写」や「シンナー転写」を用いて作品を制作してきました。紙に印刷したイメージを、アクリル樹脂系のメディウムやシンナー溶剤によって支持体へと写し取り、乾燥させた後、表層の紙を水で濡らして刮いでいくという手法です。彼女は絵画作品などを制作する際の下絵のために用いられるこれらの手法そのものに着目し、使用するメディウムや支持体となる布地や鏡といった素材のスタディを繰り返しながら、独自の表現を探求してきました。紙に印刷されていたインクだけが残り、布のテンションによって引き裂かれながら定着することで生まれる作品には、コラージュされた文脈や物語が、複雑なテクスチャの中に浮かび上がります。

一方で西村は、針で金属版やプラスチック板を直接彫る「ドライポイント」という版画技法や、凹凸のあるものの上に紙を置き、鉛筆やパステルなどの描画材で擦るように描く「フロッタージュ」という技法を基に、彫られた凹凸が生み出す有機的な表情に着目し作品を制作してきました。彼はこれらの洗練された版画技法に加え、紙に刷るのではなく、版にインクを詰めてから木枠で囲い、石膏を流し固めて転写する「石膏刷り」の技法を取り入れることで、プレス機のサイズに規定されない版画の可能性も探っています。流動的なインクと石膏が溶け合いながら、ある瞬間で時が止まったようにもみえる作品には、幾重にも観測された現象が、独特のマチエールの中にあらわれます。

本企画では、京都芸術センターの展示空間内における滞在制作と展示を通して、アーティストがそれぞれ独自に培ってきたこのような「うつし」の技法を取り上げ、その表現を/が可能にしているものへと目を向けます。

*関連企画・イベントの詳細はウェブサイトをご確認ください。

京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2 Tel:075-213-1000

ギャラリー・パルク Gallery PARC

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坂口佳奈・二木詩織
そこら中のビュー


2023.6.3(土)〜 6.25(日)
水・木休廊

Gallery PARC[グランマーブル ギャラリー・パルク]では、2023年6月3日[土]から6月25日[日]まで、坂口佳奈・二木詩織による展覧会「そこら中のビュー / The Journey Through Everyday View」を開催いたします。

おもに絵画表現を中心に活動する坂口佳奈(さかぐち かな)と、パフォーマンスや映像などを手掛ける二木詩織(ふたつぎ しおり)は、2019年のギャラリー・パルク主催の公募展に応募するにあたり「人が2人いたら何が作れるんだろう?」への興味から共同制作・発表を開始。個展 「キャンプができたらいいな。」(2019, Gallery PARC / 京都)以降、「物語のものがたり」(2020, あまらぶアートラボ A-Lab / 兵庫)、ワークショップ「目でさわる、ことばで歩く」(2023, 三島硫黄島学園 / 硫黄島, 鹿児島)などの機会に各地を旅しながら、互いの視点やコミュニケーションのズレ、あるいは一致のおもしろさ、リアルとフィクションの曖昧性を含む作品をインスタレーション形式で発表しています。

本展は2023年の鹿児島への旅をはじめ、これまでの旅の延長線でありながら、また違った視点によって旅・移動についての思考や気づきを映像やドローイングなどによるインスタレーション作品として発表します。

また、会期中には、ギャラリー周辺を散策しながら見つけて風景と言葉を元に、そこに違った視点・ちがった関係を見つけるワークショップ「うらおもて絵画を作ろう」を開催いたします。どちらもぜひご参加ください。


ワークショップ 「うらおもて絵画を作ろう」

「うらおもて絵画」は、おもて・うらの両方があって完成する絵画です。みんなで京都の町を散策して、気になる光景やものごとをメモします。そのあとに片面に文章、もう片面に絵を描いて「うらおもて絵画」作ります。
■日時:2023.6.24(土) 13:00-16:00
■定員:10名程度
■参加費:1500円
■対象:小学生以上(小学3年生以下は要保護者同伴)
■要事前申込:申込フォーム

京都市上京区皀莢町287 堀川新文化ビルヂング2階   開廊時間:13時~19時 休廊日:水・木曜日 

GALLERY TOMO

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常設展

常設展を不定期で行っています。
作家:篠原猛史、石原孟、板垣旭、こうす系
   鳥彦、杉谷一考、藤田薫、町田藻映子

展示・作品に対するお問い合わせは以下の連絡先までどうぞ。
GALLERY TOMO

京都市中京区寺町通丸太町東入る南側下御霊前町633 青山ビル1F Tel:075-585-4160 休廊日:月・火曜日

KUNST ARZT

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赤坂侑花 個展
光の中で


2023.6.3(土)〜 6.11(日)

KUNST ARZT では、昨年に引き続き4度目となる赤坂侑花の個展を開催します。
赤坂侑花は、ピュアでカラフルな側面とメランコリックさを内包するアーティストです。
子ども時代の楽しかった記憶やなんでもない日々の幸せを点描のようなタッチで描き出します。
キャンバスに油彩で描くことと並行して、 絵画世界の住人を立体化させ、 展示は立体曼荼羅のような独特のインスタレーションです。
本展では、 最近死んでしまった、絵画の住人でもあった猫と現在家族の一員である猫たちがメインモチーフに なる構想です。

KUNST ARZT 岡本光博

<展覧会コンセプト>

自分が安らげる場所を探し、描いています。
それは小さい頃の思い出の中にあったり、 日常生活の中にあったり様々です。
半年前、飼っていた猫が死んでしまいました。
その猫がリビングの天井の梁に登り、 家族の団らんを見下ろす姿が今でも忘れられません。
そんな穏やかな日常の風景がとても大事なものだと気付きました。

 

山本紗佑里 個展
ほこりの明滅


目硝子の咲く丘
2022
コンタクトレンズ、まち針、刺繍枠
210mm×200mm×60mm

2023.6.13(火)〜 6.18(日)

KUNST ARZT では、初となる山本紗佑里の個展を開催します。
山本紗佑里は、自身の生活の中から出たゴミを素材として、詩情豊かで静謐な作品を生み出すアーティストです。
素材は、抜け落ちた髪の毛、使用済みのコンタクトレンズなど、アーティスト自身の身体と関係のあったモノから、メモ書きされた紙やファウンドオブジェまで多岐に渡ります。
アーティストのささやかな介入によって、 これらのゴミに内在している “瞬間のきらめきと似たもの” と出会えるかもしれません。

KUNST ARZT 岡本光博

*今年の京都府新鋭選抜展にて朝日新聞社賞を受賞しました。

<アーティストステートメント、展覧会コンセプト>

ちょうどこれを書いている3月の末、 街中を歩いていると桜がもりもりと咲き競っていて、 いつもよくすれ違っていた木々に、 いやあなた桜やったんですかと面食らうことがままある。
種類によっては既に花びらを散らしはじめているのもあって、 銘々に伸びる枝先の範囲を示すように円環状に 白の花びらが地面に張り付いていて あっ となる。
あの爛漫といった面影はないものの、確かにあった形が 地面に写しとられたようなその領域は、花を落としてもなお 自分の咲いた領分に気配を宿らせているようで、 勝手ながら崇高なシーンと思っている。
そんなふうに期間限定で見せてくれるきらめきでいえば、 地面に落ちた白木蓮の肉厚な花びらなんかもそうだ。
踏まれたり圧がかかったところだけが茶色に変色しており、 突如似合わない人工的な斑点模様を呈していて 少しギョッとさせられるものの、そこから靴底の模様や それを履いていた人の足どりが想像される。

毛髪をはじめ生活の端々のごみを使って作品を作ることは、 そういう瞬間のきらめきに似たものをより近くで見たいがために している事なのかもと思っている。水分を失って変色し、風に伴って砂利と一緒に路傍に吸い込まれてゆく桜の花弁と、 自分の皮膚から抜け落ちて床に落ちている毛髪。
自分の生活ひいては命の痕跡をなぞり確かめる感触は、 桜と違って私にとっては卑近で厭わしくもより実感が湧くもので、 さらにそれがちょっと別の顔を見せた時に、 可能世界が延長したような気がするのだ。

 

三宅佑紀 個展
ミルラの布


夜のスケッチ#14・15
2022
ケント紙にパステル
788×1091mm×2
photo by Ayumi OKAMOTO

2023.6.20(火)〜 6.25(日)

KUNST ARZT では、2年ぶり5度目となる、 三宅佑紀の個展を開催します。
三宅佑紀は、記憶の中にある一場面を、 記憶だけを頼りに表現するアーティストです。
本展は、アーティスト独自の見せ方として確立してきた「絵画作品を床に平置き展示する」 構想です。
まるで落ち葉のように重力からも解放された軽やかさと、天井照明を均一に受けることで、 独特の淡いパステル描写が壁面展示とは違う表情を見せます。
また本展タイトルの「ミルラ」とはミイラの語源ともなった香料であり、永遠に保存されるようにとの願いを託して、ミイラに巻く布を浸したそうです。
ミルラを感じるように、床置きの作品たちの大切な記憶を鑑賞ください。

KUNST ARZT 岡本光博

<展覧会コンセプト>

ミルラというのはミイラの語源となった香料だそうだ。
読んでいた小説の中で見かけて初めて知った。
中身が永遠に保存されるよう、 最後にミルラに浸した布で包むという。
布を解くまでは記憶の中では中身は 変わらない姿のままあり続ける。
本を読みながら、私の記憶はまだしばらくは 包んだままにしておきたいと思った。

京都市東山区夷町155-7 2F Tel:090-9697-3786 休廊日:月曜日

ギャラリー恵風  Gallery Keifu

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*今後周囲の状況を鑑み、変更することもございますので、ご来場の際はホームページやFacebookでご確認くださいませ。

 

〈1F〉
吉岡 佐知 展
あした、あさって


2023.6.6(火)~ 6.11(日)

予測の甲斐なく未来は飛んできて、現在はいまも脇腹をすり抜けて いるところだ。
心だけ行きつ戻りつたゆたうけれど、せめてあした、できるなら あさって。
そんな感じでつなぎとめる。
岩絵具を膠でとどめるのとすこし似ている。(吉岡)

 

〈2F〉
関 友道 作品展
つむぐ


2023.6.6(火)~ 6.11(日)

今のこの世に生を受け、存在している自分。
今までの自分で今の自分がつむがれている。
生まれてきた いのち として、
その不思議と幸せを感じながら
自分をつむぐ世界を見つめ
自分の作品を、自分の世界をつむいでいきたい。(関)

 

〈1F〉
山本 晋 展
symbiosis


2023.6.13(火)~ 6.18(日)

現実と幻想
生と死  虚と実
闇を描こうとして
花をみつける。
沈黙を描こうとして
音色がみえる。
遠くのイメージを
現代の機器、そして薄く溶いた
絵の具をぬり重ねて視覚化する。(山本)

 

〈2F〉
柳楽 剛 ろう染展


2023.6.13(火)~ 6.18(日) 

蠟染は技術的に制約が多く、繊細な作業が要求されますが、 それだけに作品制作では技巧だけが先行しないように心掛けています。
植物を描くときは、目の前の花や果実の形よりも、その奥にある生命力をつかみ取ることを意識しています。
地面に落ちた種子が発芽し、成長して花が咲き、やがて散って実がなり、枯れてまた新たに芽吹く……。
散ってしまった花や、枯れた葉や茎、朽ちかけた果実にこそ、より強く生命力を感じることがあります。(柳楽)

京都市左京区聖護院山王町21-3 TEL:075-771-1011 休廊日:月曜日

2kw gallery

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安喜万佐子
「時の霧―近江景」


2023.5.4(金) 〜 5.28(日)

時の霧 - 近江景 / 安喜万佐子

パンデミックにより世界中が移動制限に見舞われる中、私は海外でのリサーチを中断し、さらに欧州で戦争が始まるなど混乱の背景もあり、生活圏から比較的近い地域である「近江」に関心を向けるようになった。

まず、古人が「近江八景」を描いたであろう場所に立ち、そこから見えるものを、ゆっくり観察し、描くことから始めようと考えた。

広重の「唐崎の夜雨」に現れる、美しく、かつ異様な、大きい黒い松に惹かれていたこともあり、まずその場所に足を運んだ。現在の唐崎の松は、年老い、折れているのか曲がっているのか、地を這い、混乱するほど多くの支柱に支えられた複雑な姿で、湖岸の風にさらされていた。(*註1) 夕暮れ時に松がシルエットになり、そして、夜の闇に溶け込む時間帯にだけ、ようやく松の存在と交感しながら描くことができた。何度もその夕暮れ時に訪れた。

「堅田の落雁」を期待しても鴈がやって来ることはなく、「瀬田夕照」の大橋から三上山は見えなかった。結局、移動しながら三上山の姿を求めた。大型ショッピングモールが立ち並んだ「矢橋」には困惑さえしたが、それぞれの場所を何度も歩き、見て、描く時間は、その地に立ち込める「時の霧」に迷い込む貴重な体験となっていった。過去に同じ地を歩き、描いた人々とつながる静かな喜びは、現在の記憶と未来がつながること、未来が変わらずここにあることへの小さな祈りのようなものなのかもしれない。(*註2)

「八景」と謳われてはいないが、伊吹山にも度々訪れた。標高が高くなると霧に包まれることが多い。そんな中、人々がその現象に信仰を抱く普遍を感じながら、見えるものと見えないものの境が消えた風景を歩いた。

「時の霧」を彷徨いながら見ることは、他者の時間や普遍の記憶と少なからずつながることを意味する。それは、私が、絵画に求めてきたことに近い。見ることは、時間の中にある。そして、見ることには、時間がかかる。

(*註1)何度か通っている中で、その年老いた現代の唐崎の松は、記録上、奈良時代を初代とした3代目、約150年前に植えられたものだと知った。

(*註2)近江の景には、常に、水という生命の根源にも喩えられるものが寄り添っていた。そのことが「過去・現在・未来を内包した霧」を発想させ、それが立ち込めて動いているビジョンに結びついたのかもしれないと、いくつかの作品が完成を迎えた頃、気がついた。

滋賀県大津市音羽台3-29-1 TEL:090-5241-8096 休廊日:月・火・水曜日

Gallery G-77

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アンナ・ハヤトとスラヴァ・ピルスキー
「裂け目、繋ぎ目、そして裂け目」


ひまわり
2022
ポラロイド写真、キャンバスにプリント、
糸で刺繍、紙
72 x 54 cm

2023.4.30(日)〜 5.14(日)
火~日 12:00~19:00 月・休廊

アンナ・ハヤトとスラヴァ・ピルスキーの 「裂け目、繋ぎ目、そして裂け目」展では、この展覧会のために制作された精緻な作品が展示されます。ほとんどが布にプリントされた写真で、あるものは断片化され手縫いされ、またあるものは糸の端が流れ落ちるように刺繍されたものです。縫い合わされ、引き裂かれたイメージの縫い目は、まるで傷ついた身体のように痛みを伴っているようです。大判の写真は、2007年に製造中止となった旧式のポラロイドフィルムで撮影されたものです。薬品はランダムなシミを残し、将来のイメージの崩壊をほのめかし、その跡を残しています。初期のアナログ写真を彷彿とさせながらも、それとは異なる作品です。

今回初めて、二人は金継ぎからインスピレーションを得た縫製作品を展示します。金継ぎとは、割れた陶器の接合部分を強調し、欠点を隠そうとせず、器の歴史を保存するものです。また、写真に刺繍やステッチを施すことで、平面と立体の間を行ききするような作品を制作しています。ウクライナでの戦闘は、彼らの友人や親戚の生活に直接影響を及ぼしているため、作家たちは大きな関心を持ってニュースに注視しています。緩やかな刺繍が施された作品からは、緊迫感と傷みが伝わってきます。

キュレーターのスマダー・シェフィ博士は、次のように述べています。「1999年に共同制作を始めて以来、二人が培ってきた芸術的言語は、写真と絵画の間の継続的な対話を行うものである。『マラットの死』は、フランスの新古典派画家ジャン=ルイ・ダヴィッドの「マラットの死」(1793年)に直接言及している。この絵は、フランス革命の指導者の一人であるマラが自宅のバスタブで殺害される様子を描いたものです。ダヴィッドは、この絵にキリスト教の図像(特に、現在バチカンにあるミケランジェロの「ピエタ」(1499年)に類似している)を吹き込んだ。ハヤトとピルスキーは、戦いに敗れたかのように降伏した姿勢で牡丹の花輪を水平に置き、つぎはぎ、継ぎ目、ほつれた糸が、イメージから生じる絶望のメランコリックな感覚を強めている。」

京都市中京区中之町73-3 Tel:090-9419-2326 休廊日:月・火曜日

現代美術 艸居

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<艸居>

 

ジェニファー・リー :
セラミックとドローイング


ジェニファー・リー
《淡色、斑点の跡、斑点のあるオリーブ色、傾いた層》
2022、手びねり彩色炻器
H35.1 x W18.4 x D18.1cm

2023.5.11 (木) 〜 7.26 (水)

艸居(本店)では、個展「ジェニファー・リー: セラミックとドロ ーイング」を開催いたします。2015年と2018年に引き続き弊廊では 3 度目の個展となります。 2018 年には、第 2 回ロエベ・クラフト・プライズ賞を受賞し、国際的にもより大きな認識と評価を獲得しました。2021年には陶芸への貢献が認められ大英帝国勲章(OBE)を受章し、ルー シー・リー、ハンス・コパーに続くイギリスを代表するスタジオポタリーとしての確固たる位置 付けをされている作家です。

静けさの中に、凛とした佇まいを感じさせるリーの作品は、釉薬を使わず、酸化金属を土に混合するという独自の手法で、独特の色と洗練された形が融合するスタイルを確立させました。リー は様々な旅行先で集めた酸化物と土を、すぐには使わずスタジオに数十年寝かせます。それは、リーの記憶と共に熟成され、焼成後の壺の仕上がりに変化をもたらします。手びねりで成形された器には複数の土が使われており、部分ごとに色が混じり合い、複雑なグラデーションや濃淡のある斑点がさまざまな表情を作り出します。これらはリーの⻑年の経験やテストピースに基づい ており、酸化物がどう反応するのか、配合や配分を計算した化学反応の結果によるものです。そして、僅かな接地面が絶妙のバランスで器を支え、淵の物静かな傾斜は彼女の作品を強く印象付けています。

土を焼成することで瞬間を切り取り、作品に普遍性を持たせることができるとリーは言います。また、作品の記録として制作後に描かれるドローイングは、制作の記憶を留めながらも、見る者を思索の世界へ導きます。

リーは1994 年の初来日以降、日本との関わりを深めてきました。2009 年には 21_21 DESIGN SIGHTで開催されたイッセイミヤケによる展覧会「U-Tsu-Wa」展に出展。インスタレーションは建築家の安藤忠雄が手がけ、リーの器が大きな水面に幻想的に浮かべられました。その他、ささま国際陶芸祭への招聘(2013 年)、滋賀県陶芸の森での 3 度の招聘滞在制作(2014、2015、2018 年)や、益子国際工芸交流事業での招聘滞在制作(2019年)などがあります。本展では、手びねりの器 10 点、湯呑み 20 点、陶板 1 点、ドローイング 5 点を展示いたします。是非ともこの貴重な機会にご高覧いただきますようお願い申し上げます。

京都市東山区元町381-2 Tel: 075-746-4456 開廊時間:10:00AM- 6:00PM 休廊日: 日・月曜日

美術館情報

京都市京セラ美術館
本館 北回廊1階
新館 東山キューブ

ルーヴル美術館展
愛を描く
2023.6.27(火) - 9.24(日)



京都市京セラ美術館
ザ・トライアングル

米村優人:BAROM
(あるいは幾つかの長い話)
2023.6.20(火)- 9.24(日)


「BAROROMSQUAUD/
1人でも立ってられるって!」
展示風景 2022年
撮影:岡はるか


京都国立近代美術館

開館60周年記念
Re:スタートライン
1963-1970/2023
現代美術の動向展シリーズにみる美術館とアーティストの共感関係
2023.4.28(金)- 7.2(日)


美術館「えき」KYOTO

和 田 誠 展
2023.5.20(土)– 6.18(日)


『週刊文春』
雑誌表紙 2017
多摩美術大学アート
アーカイヴセンター蔵
©Wada Makoto