◆展覧会についての最新情報は、各ギャラリーのサイトでご確認ください。

イムラアートギャラリー京都 imura art gallery Kyoto

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高瀬栞菜
「After the Same Moon|同じ月を見た、そのあとで」


《背負う亀》
116.7×91cm
キャンバスに油彩
2025


《Letters》
116.7×116.7cm
キャンバスに油彩
2025

2025.6.21 (土) ~ 7.12 (土)

この度イムラアートギャラリーでは、高瀬栞菜の個展「After the Same Moon|同じ月を見た、そのあとで」を開催いたします。

高瀬は、1994年大阪生まれ、2020年に京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻修士課程修了後、京都を拠点に活動しています。2024年には、京都府新鋭選抜展最優秀賞を受賞、京都市文化博物館別館ホールにて、大規模な個展を開催いたしました。

動物をモチーフに描かれることが多い高瀬の作品ですが、その根底には、人間のコミュニケーションに対する興味があり、言葉では表しきれない感情を動物に置き換えて表現しています。爪や牙などは、お互いを傷つけあう要素であり、毛皮は自分自身を守っているメタファーでもあります。

展覧会のタイトル「After the Same Moon|同じ月を見た、そのあとで」には、「人と人とのあいだに生まれる重なりと、そこから生まれるすれ違いや微細な感情の揺れ」を「同じ月を見た、そのあとで」という時間の余白を通して描きたいという作家の思いが込められています。

本展では、新作10点を展示予定です。イムラアートギャラリーでの2 年ぶりとなる高瀬の個展を是非ご高覧くださいませ。

<アーティストステートメント>

「After the Same Moon」同じ月を見た、そのあとで。
一緒に過ごしたはずの時間、共有した記憶、同じように見上げた月。けれど、その “同じ” の中には、いつの間にかずれていく心の動きが潜んでいます。時間が経つにつれて、思い出す景色も、そこに重ねる気持ちも、少しずつ変わっていく。同じだったはずのものが、知らないうちに、ちがうものになっていく。

今回の展示では、そんな人と人とのあいだに生まれる重なりと、そこから生まれるすれ違いや微細な感情の揺れを、「同じ月を見た、そのあとで」という時間の余白を通して描こうとしました。 その揺れは、何気ないやりとりの中でうまく伝えられなかった思い、ふと湧いた不安や、名前のつかない悲しさ。人と関わることで立ち上がる、言葉にしにくい感情の揺れを、動物や植物、モノの姿に置きかえながら、ユーモラスでありつつ、どこか不穏で切実さを帯びた画面に落とし込み、小さな物語の断片を紡ぎました。

重なった時間の記憶と、そこからすこしずつ離れていく私たち。そのあわいに漂う気配が、あなたの中 にある「同じ月」の記憶と、静かに響き合うことを願っています。

高瀬栞菜

京都市左京区丸太町通川端東入東丸太町31 Tel:075-761-7372 休廊日:日・月曜日&祝日

同時代ギャラリー DOHJIDAI GALLERY of ART

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〈ギャラリー〉

 

五十二人旅、(第20回旅展)


2025.7.15(火)〜 7.20(日)

今年で20周年を迎える嵯峨美術大学OB・OGによるグループ展です。
幅広い年代による様々なジャンルの作品を展示します。
お時間がございましたらどうぞご高覧下さい。

 

「萌し -可能性のきざし-」展
成安造形大学
イラストレーション領域4年 永江ゼミ展


2025.7.22(火)〜 7.27(日)

「萌し」はきざしと読み、「兆し」と同じ意味をもつ言葉です。ゼミ生一同、鑑賞者に新しい感覚や思いを感じていただけるように制作を行いました。
本展覧会は、成安造形大学イラストレーション領域の永江ゼミ 7名の卒業制作中間発表という位置付けです。前期の成果をご高覧いただき、2026年2月12日~2月15日に京都市京セラ美術館で開催予定の卒業制作展で成果の全貌をご鑑賞いただけると幸いです。

(指導教員・成安造形大学教授 永江弘之)

京都市中京区三条御幸町南東角 1928ビル2階 Tel:075-256-6155 休廊日:月曜日

エンアーツ eN arts

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showcase #13
“ひとの気配 – Human signs”
curated by minoru shimizu


宮下五郎


山崎雄策

2025.4.11(金)〜 5.11(日)
開廊日時:上記会期中の金・土・日 12:00-18:00
月〜木曜日はアポイントメントを承ります。
KG + 2025参加

eN arts では、清水穣氏のキュレーションによります、写真・映像に特化したグループ展 “showcase #13” を開催いたします。写真及び映像の現代若手作家のショーケースとなるこの展覧会は2012年からスタートし、シリーズ13回目を迎えます。 清水氏が「showcase#13 “ひとの気配 – human signs”」のために選出したのは、2014年キヤノン写真新世紀で優秀賞を受賞した山崎雄策と、2017年キヤノン写真新世紀佳作賞受賞の宮下五郎。

「ひとの気配」とは、視覚では確認できないけれど、微小な音やその遮り、空気の動きなどで感じられるもの。見ることのできない「ひとの気配」を、見なければならない写真作品でどのように表現してくれるのでしょう。どうぞお楽しみに。

eN arts

eN artsは 本年もKYOTOGRAPHIE2025に KG+ for Collectorsとして参加致します。


ひとの気配

ここ数年来、showcaseは、初登場の新人と、過去に登場した作家の2人展という形を取っている。二人の作家を選ぶ際に、とくに共通のコンセプトとか相性というものは考えない。むしろ二人の写真家を組み合わせることで、コンセプトはあとからあぶり出されてくる。あるコンセプトをいかに表現するかにおいて、二人の写真家が相補的であることもあれば、対照的であることもある。

宮下五郎は、2017年にキヤノン写真新世紀佳作(清水穣選)を受賞して注目された。今回は、「目は口ほどにものを言い」とか「ふと視線を感じる」とか言うときの「眼」であり、宮下はそれを文字通り被写体とする。撮影された眼はカメラ目線ではなく、その瞳が開いているので、暗がりにいる被写体の眼にピンポイントで光を当てて撮影していることがわかる。つまり、これらは口ほどに物を言う眼、視線を向ける眼を、観察した写真なのである。機械としての写真の力が存分に発揮される。無言の雄弁さを奪われ、何を見ているわけでもない、ただの即物的な眼が並んでいる。

山崎雄策は、ちょうど10年前、2015年のshowcase #4にも登場してもらった。2013年キヤノン写真新世紀佳作(清水穣選)で注目され、翌年には優秀賞を獲得した。今回は、デビュー作「さい子」シリーズのリニューアル&リミックスバージョンとのことである。ヒッチコック監督の「サイコ」に掛けた「さい子」は、写真が好んで生み出す、目に見えないもの(とりわけ人間)の気配、痕跡、視線を主題として、前兆と痕跡、未来と過去をめぐるそのレトリックを、写真によって問い続けている。

2025年4月、清水 穣

EYES TALK

眼は、嘘が苦手だ。
眼は、無防備で、正直だ。
他人に自分の内面を悟られたくないという心理とは逆に、
どれほど隠そうとしても、眼は、人間の心をありのままに映し出す。
喜び、悲しみ、怒り、驚き。
愛、憎しみ、妬み。
孤独、嫌悪、困惑、焦燥、恐怖。
人間のありとあらゆる複雑な感情は、二つの眼球に精密に映し出される。

写真を撮るという行為が、人間の本質を炙り出すものだとしたら、
究極のポートレートとは、人間の眼である。
人間を人間たらしめる究極の臓器。それは、むきだしの眼をおいて他にない。
年齢・ジェンダー・職業・障害・国籍。
そのすべての境界を乗り越えて、写真家、宮下五郎が、
多様な108人の眼のポートレート撮影に挑んだ。

宮下五郎

女子高生が77日ぶり発見、「神隠し」騒動の謎深まる

「2013年7月11日から行方不明だった千葉県茂原市の女子高生(17)が、9月26日に自宅近くの神社の社で発見された。衰弱し体重は半分に減少、軽い脱水症状を示すが怪我はなし。本人は社に隠れ、畑の野菜を食べていたと説明。しかし、過酷な環境で77日間過ごせたのか、発見の遅れや証言に矛盾があることから、ネットでは「神隠し」の噂が広まり、真相は未だ解明されていない。」

山崎雄策

京都市東山区祇園北側627 円山公園内八坂神社北側 Tel:075-525-2355 開廊日:金・土・日曜日

ギャラリー16 galerie16

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二瓶 晃 展
aliénation


2025.7.8(火)〜 7.19(土)

 

寺田就子 展
塵と星くず


2025.7.22(火)〜 8.2(土)

<作家コメント>

空気中に漂う塵も光があたればキラキラと輝き、きれいに感じられるときがある。ぼんやり見上げた空に輝く星々も同じようなものかもしれない。

京都市東山区三条通白川橋上ル石泉院町394 戸川ビル3階 Tel:075-751-9238 休廊日:月曜日

ヴォイス・ギャラリー MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w

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特別展「開廊39年のご挨拶」
“39th.Greeting”


衣川泰典
「石化する風景#14-ハイビスカス」
2024年


松本和子
「The Blessing road」
2024年

2025.7.10(木)~ 7.13(日)
7.19(土)〜 8.10(日)の土曜日・日曜日/13〜19時

出展;
岩田智代、キース・スペンサー、衣川泰典、日下部一司、近藤千晶、酒井一貴、坂本優子、中村敦、西村勇人、松本和子、劉峻如をはじめ10数名

随時、作品の内容や出展者をお知らせします。

京都市下京区筋屋町147-1 Tel:075-341-0222 営業時間:13時~19時 休廊日:HPにてご確認ください。

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA

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KCUA OPEN CALL EXHIBITION
2025年度申請展
国際的非暴力展 #SUM_MER_2025


2025.7.5(土)〜 8.3(日)
休館日:月曜日
7.21(月・祝)は開館、翌日の7.22(火)を休館

主催:京都市立芸術大学
  (2025年度京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA申請展)
企画:国際的非暴力展実行委員会

ロシアによるウクライナ侵攻以降、アーティストが主導するかたちで、国際的非暴力展を過去3回開催しています。前回の#W_INTER_2024は京都市立芸術大学内の教室や食堂などで開催し、学生や京都在住のアーティストなど80人ほどが参加。ワークショップやパフォーマンス、搬入や搬出の協働、新聞づくりなどを通して、さまざまな対話と交流が生まれました。国際的非暴力展実行委員会はアーティスト、キュレーターを含む市民による国際的な非暴力展を継続開催するために結成されました。#SUM_MER_2025でも作品展示、講演会、ワークショップなどの様々なイベントを開催します。

所信表明
本展は、世界的パンデミックの影響が続く中で、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルによるガザ虐殺に代表される、市民の生命と人権を脅かす暴力に対し、アーティストたちが「非暴力」「反戦」の声を届ける展覧会です。2022年夏にアーティストたちが声をあげて始まり、今回で4回目となります。ひとりで悩むのでも、無力感に打ちひしがれるのでも、見て見ぬふりをするのでもなく、作り、手を動かし、集まり、展示することを手放さないようにしようという声から、この展示は始まっています。デモや、寄付や支援、具体的なアクションや学習を忌避する態度としてではなく、本展は、それぞれが得意なこと、やりたいと思うことをやりきることが、ひとつの抵抗になると信じるものです。

この展示というフレームが、小さな声や、微かな態度、見えにくい表現を、(他のさまざまな手段よりも)いっそう確かに受け止めることができると望んでいる。世界というよりももはや日常に響いている強く圧倒的な声にときに従わざるを得ないと感じ、その声に不安や恐怖を感じる中で、そんな軋みの音に対抗できる場所が、アートの向こうにあることを信じたい。 従うべきものは、他者の強い声ではなく、自分自身の内から湧き出る意志しかない。計画と偶然、自律と他律、立ち止まる必要と動き続ける必要—— これらすべての矛盾を超えていくために必要なのも、結局その意志だけだろう。だからこそ、始めること、変わること、動くこと。この展示に集ってほしい。

アンデパンダンであること、それでもキュレーションらしきものがあること。政治的なイシューがあること、にも関わらず個々の作品は勝手に自治を示していること。展覧会として提示されている、けれども「展示」にとどまらない諸実践が必然的に多数生まれてしまっていること。内部に自閉する傾向と外部に展開する傾向が、拮抗しているとも言えるし相反しているとも言えること。アートの良いところと悪いところが、等しく出てしまっているところ。 このような矛盾のなかでしか見えてこないものがあるのだとしたら、という前提について考えています。「日本アンデパンダン」と「読売アンデパンダン」の間にあったかもしれないもの、「政治」と「美学」をなし崩しにするのでも誤魔化すのでもなく、それをゼロから考えることを阻害するものを正しく認識し、その対処法を知ること、無数の恥辱からもう一度始められる美術のこと、を考えています。

(テキスト:国際的非暴力展実行委員会)

 

KCUA OPEN CALL EXHIBITION
2025年度申請展
Workshop/共に作るとは何か


2025.7.5(土)〜 8.3(日)
休館日:月曜日
7.21(月・祝)は開館、翌日の7.22(火)を休館

主催:京都市立芸術大学
  (2025年度京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA申請展)
企画:京都市立芸術大学 共有工房(立体)設備職員有志

「Workshop『共に作るとは何か』は、京都市立芸術大学のキャンパス移転にともなって新設された共有のものづくり施設「共有工房」の設備職員有志の企画による、「共に作るとは何か」をテーマとした展覧会です。同テーマのもと、約2ヶ月の間、学生とともに行ってきたワークショップ活動の記録を中心として構成しています。本展ならびに会期中に行う市民を対象としたワークショップなどを通して、共に作ることについて、学内外を問わずたくさんの方々と共有し、作りながら、考えることのできる場にしたいと思います。

テキスト:藤澤信輔 [共有工房(立体)設備職員]

1. 作る / 共有の貨物運搬用自転車を作ってみよう!
2. 作る / 地域の木材でみんなでつくってみんなでつかう 「おせっかいベンチ」
3. 作る / ショップボットで継ぎ手を作って、椅子を組み立てよう
4. 作る / 「ささやかな繋がりのための」
5. 作る / ロープワークを使ってできること
6. 作る / 素材についてどのように捉える?
7. 支える / 空間展示 (@KCUA) について、 共有する
8. 支える / ワークショップ記録撮影について、 共有する

京都市下京区下之町57-1 京都市立芸術大学 C棟1F Tel:075-585-2010  休廊日:月曜日

MORI YU GALLERY 京都

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「どれほど近くとも遠い現れ」
秋山珠里 世良剛 寺村利規 浜崎亮太


2025.6.28(土)~ 7.20(日)
休廊日:月・火・祝日

MORI YU GALLERYは6月28日(土) - 7月20日(日)まで、秋山珠里、世良剛、寺村利規、浜崎亮太の四作家による「どれほど近くとも遠い現れ」を開催いたします。

展覧会タイトルは、二十世紀前半のドイツの思想家ヴァルター・ベンヤミンの芸術論で説かれている「アウラ(aura)」という概念を参照しています。ベンヤミンによればアウラは、写真・映画といった視覚的な複製技術の誕生・普及によって、芸術から失われていくものとされています。ベンヤミンが『複製技術時代の芸術』においてアウラを定義した一文にはこうあります。
「アウラの定義は、時間と空間とが独特に縫れ合ってひとつになったものであって、どんなに近くにあっても遠い一回限りの現象である。」

日本では禅の「即今当所」や茶道の「一座一会」「一期一会」、また「いま、ここ」といった言葉が身近にあるためなのか、アウラについて「一回限りの現象」という部分に焦点が当てられる傾向があるように思われます。
しかし考えてみれば「いま、ここ」以外の時間も空間も私たちにとってはありはしないのですから、一回性はその質が軽くとも重くとも、それを認識する者が存在し続ける限り、常に在り続けると言えるでしょう。
ベンヤミンは演劇におけるブレヒトの時代に、ピエル・パオロ・パゾリー二やロラン・バルトが「ポエジーとしての映画」や「鈍い意味(プンクトゥム)」と呼ぶような、新たなアウラとも言うべき現象が、映画・写真のなかに現れるとは想像し得なかったのでしょう。
しかしながら実際、写真には写真の、映画には映画の、あるいは際限なく複製される電子データにも、それぞれ一回性があり、一回性のない現象を探す事は厳密には不可能でしょう。
そうした観点からは、あらゆるメディウムについて一回性を否定することはできません。したがってアウラにおいて考察されるべきは、むしろ「どんなに近くにあっても遠い」ということ、そこにこそ芸術におけるアウラが何に関与してきたのかという重要な点が示されているのではないでしょうか。
「作品から得体の知れない受け取りようのない遠い何かを、受け取ってしまうという近さ」
「作品から神の様な遠い何かを感じるという近さが持つ、崇高さ」
例えばそれはこんな風に言う事が出来るのかもしれません。
ただしそれは万人が同様に感じたり、受け取ったりできるものではなく、ある瞬間に、ある状況において、ある特定の存在だけにその瞬間が訪れます。
そして、そうした作品と観察者の特異な邂逅こそが、一回性をより強く感じさせるのではないでしょうか。

かつてアウラは宗教的な啓示や超越的な霊性とともにあり、近代はそれを論理や唯物性、現実的な因果性によって超克しようとしてきました。しかし、ベンヤミンの言うようにアウラが凋落し喪失している現代において、新たなアウラ性の現れを見出すことはできるのでしょうか。この四作家による展示は、そうした探求の試みであると言えるでしょう。

どうぞ御高覧ください。

京都市左京区聖護院蓮華蔵町4-19 Tel:075-950-5230 休廊日:月曜日・火曜日・祝日

ギャラリー ヒルゲート  Gallery Hillgate

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〈1F〉
'25京都銅版画協会ミニアチュール展

2025.7.15(火) ~ 7.20 (日)

 

〈2F〉
京都銅版画協会特別展2025
瀧光太郎・土井健一

2025.7.15(火) ~ 7.20 (日)

 

〈1F〉
金田千加子 展(油彩・アクリル)

2025.7.22(火) ~ 7.27 (日)

<金田千加子作品、その心地よさと不穏と>
私は以前から、金田千加子の作品に注目してきた。
かつては、画面に色々な素材をコラージュしながら制作するというスタイルだったが、現在は絵具だけで表現するというシンプルなスタイルになっている。そのことにより、絵画空間としての強度が増したように思う。彼女の作品には、様々な魅力的で蠱惑(こわく)的なキャラクターが登場し、不思議な無言劇を繰り広げる。異形でありながら、どこか親密な形態にデフォルメされ、色彩的にも美しく洗練された登場人物達が、見る人に心地良さを感じさせ、彼女の絵画世界へと誘ってくれる。単に物語性があるだけでなく、それを支える為の構図や色彩を含めた造形的な工夫が素晴らしく、絵画としての質を高めている。
しかし、その世界は網膜上の心地よさだけには収まらず、どこか不安げで不穏な気配を湛えている。背反する要素をつなぎ魅力溢れる作品として成立させているのが彼女の卓越したバランス感覚であり、独特の作家性であると考える。心地よさに隠された不穏な空気、その振れ幅ゆえに鑑賞者は心を捉えられてしまうのだろう。

一般社団法人 二紀会 理事 生駒 泰充

 

〈2F〉
4人のまなざし
岡本裕介・吉田えり子
一道万羅・阿波連永子

2025.7.22(火) ~ 7.27 (日)

京都を中心に団体展や公募展で作品を発表してきた四人。所属団体も作品の傾向も全く違います。おそらく、お互いどのような思想信条を持っているかも知らないと思います。しかし、昔からの知り合いでグループ展などで一緒に作品を発表したりもしていました。上善水の如き関係です。今回、突然この四人で小品を展示することになりました。祇園祭の最中、もっとも暑い時期に四人のまなざしが、何を見つめているのか楽しみです。

 

〈奥庭空間〉
鐵羅 佑 個展
五千度の庭(鉄造形)

2025.6.24(火) ~ 12.21 (日)

溶け混ざり歪んで留まる。
皮膚感覚により知覚する熱と形態。
温覚は触覚へ、温度は形態へと移行し静かにそこに佇む。

京都市中京区寺町通三条上る天性寺前町535番地 Tel:075-231-3702 休廊日:月曜日

京都芸術センター Kyoto Art Center

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<ギャラリー北・南>

 

影の残影
/ Shadow of the Shadow


2025.7.4(金)〜 9.7(日)

キュレーター:李静文|Jingwen Li(Seibun)
アーティスト:Joanna Lyu、Tim Knapen
       日下部浮|Uku Kusakabe
デザイナー:八木幣二郎|Heijiro Yagi
インストーラー:米村優人、片岡周介
映像監理:川崎麻耶

京都芸術センターでは、Co-program2025 カテゴリーB 採択企画として、インディペンデント・キュレーターの李静文による展覧会「影の残影/Shadow of the Shadow」を開催します。

本展は、デジタル技術が私たちの知覚や記憶にまで影響を与えている現代の状況を前提に、この時代の「リアル」とは何か、「主体」とは何かを問い直します。李静文によって招聘された複数のバックグラウンドを持つ3名のアーティストJoanna Lyu、Tim Knapen、日下部浮は、映像、インスタレーション、AI技術を用いたゲームなどを提示し、現実と虚構の境界を揺さぶる作品を展開します。

出品作品に共通するのは、映像の不完全さや、断片化された記憶、そして明確には捉えられない余韻=残影です。鑑賞者はこれらの曖昧な像と対峙し、自らの知覚、解釈、想像力によって、その“影”を内側から立ち上げていくことになるでしょう。

<館内各所>

 

森 太三
「ここに仮に置いてみる」


撮影:麥生田兵吾

2025.2.4(火)〜 2026.2.27(金)

主催:京都芸術センター
協力:太陽工業株式会社

2025年に開設25周年を迎えた京都芸術センターの館内各所に、森太三さんの作った椅子やベンチを約1年の期間、仮に置いてみます。森さんは、粘土を丸めたり、紙を切ったり、木材を小さく切ったりしたものを寄せ集めることで、大きな作品を制作してきたアーティストで、2001年に京都芸術センターが開催した初めての公募展「Amorphous “I” アモルファスアイ/不定形の〈私〉」(2001年2月4日-27日)の出品作家です。

25年の時を経て京都芸術センターに帰ってきた森さんの作品から、どのような風景が見えてくるでしょうか。京都芸術センターに来られた際に、ぜひ腰掛けてください。

京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2 Tel:075-213-1000

GALLERY TOMO

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Permanent exhibition

誠に勝手ながら現在はアポイントオンリーの営業とさせていただいております。

作家:
近藤大祐、篠原猛史、こうす系、石原 孟、杉谷一考、
藤田 薫、町田藻映子、山本真也、宮岡貴泉、吉田延泰、
家山美祈

京都市中京区寺町通丸太町東入る南側下御霊前町633 青山ビル1F Tel:075-585-4160 休廊日:月・火曜日

KUNST ARZT

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久保尚子 個展
一瞬の風を紡げば


2025.7.15(火)〜 7.20(日)

KUNST ARZT では、久保尚子の初個展を開催します。
久保尚子は、漆の艶と質感を生かし、 動物のしなやかな身体の動きや空気の流れを 可視化するアーティストです。
大胆過ぎるデフォルメは体の構造さえ欠落する 箇所も出てきますが、力強さやスピードといった 生き生きした野生としての生命力が 美しい漆の仕上げと相まって、独特の世界観を 構築しています。本展ではキツネ、リス、鹿、ウサギ、 羊といった5種類の動物たちをご覧いただけます。
また宙漆(そらうるし)プロジェクトへの参加によって 漆表現の可能性を探求しています。

(KUNST ARZT 岡本光博)

【展覧会コンセプト】

漆は、塗り重ねることで生まれる深みのある透明感や、 温もりを感じさせる光沢が特徴の素材である。 私は、伝統技法である呂色仕上げの美しい艶を活かしつつ、 独自の造形表現を探求してきた。
なかでも、動物のしなやかな身体の動きや、 そこに生まれる空気の流れを可視化することをテーマに、 漆の滑らかな艶と質感が引き立つ 曲面的なフォルムを追い求めている。
本展では、そうした動物たちの姿を一堂に集め、展示を行う。

【アーティスト・ステートメント】

私は、身体が「ここに存在する」と 実感できる瞬間に心を動かされる。
それは、観察を通して感じ取ることのできる曲面や曲線、 動作に応じて変化する空気や水の流れ、 光が生み出す影、静寂の中で聞こえるかすかな音ー。
私は、そうした些細な事象を拾い集め、 漆ならではの艶や温もりを活かしながら、 それらを作品へと昇華したいと考える。

 

大石茉莉香 個展
パープルレイン


2025.7.26(土)〜 8.3(日)

KUNST ARZT では、昨年に引き続き、 12年連続となる大石茉莉香の個展を開催します。
大石茉莉香は、崩壊から消滅に至るイメージに 美を見出してきたアーティストです。
「止むことのない犠牲への鎮魂」をコンセプトに、 メインルームでは、「肉」の画像を雨の降る屋外で プリントアウトし、雨で崩壊していく画像の上に オイルバーで描いた絵画作品とその記録映像を、 サブルームでは、210か国の国花を燃やす映像と その燃やした花から構成する予定です。
また、本展タイトル“パープルレイン”は、 前回の個展において、210か国の国旗を インクジェット印刷した画像を水で溶かした際に、 どの国にも使われていない紫色が 立ち現れたことにも由来しています。

(KUNST ARZT 岡本光博)

【アーティスト・ステートメント + 展覧会コンセプト】

止むことのない犠牲への鎮魂
もうどこの国の人がなどの問題ではなく増えていく犠牲に
なすすべがないとわかりながらも抗う。

京都市東山区夷町155-7 2F Tel:090-9697-3786 休廊日:月曜日

ギャラリー恵風  Gallery Keifu

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*今後周囲の状況を鑑み、変更することもございますので、ご来場の際はホームページやFacebookでご確認くださいませ。

 

〈1F〉
石原 葉 個展
Metalogue


2025.7.15(火)~ 7.20(日)

「Metalogue」とは「話者同士の関係性に応じて内容が決定する対話形式の文章」を指し、情報学研究者のドミニク・チェンは「自分の中に他者を宿そうとする」行為だと述べている。丁度この言葉を知った時、私の前には託されたわけでもなく残されたものが転がっていた。持ち主はすでに他界し経緯も分からないが捨てるに忍びない。手始めに誰にも見せることなく遺された写真を元に、他者を宿すワークとして描きはじめた。(石原)

 

〈2F〉
沖谷晃司 日本画展
日々のいろどり


2025.7.15(火)~ 7.20(日)

線、色、空間そのどれもが動いたり止まったり、流れたりして絵の世界が生まれたらと思い制作しています。
題材は娘と我が家の猫を中心に生活の中での情景を描いています。
少しノスタルジックでおかしみのある雰囲気を感じてもらえたら幸いです。(沖谷)

 

〈1F〉
井上絵美子 いらはら みつみ 展
漆三昧


2025.7.22(火)~ 7.27(日)

2019年、会津での初共演から時を重ね、二度目の二人展。漆に心を傾け、それぞれの表現を育んできた道が再び交わります。静かに響き合う作品たちが紡ぐ空間に、漆とともに歩む今とこれからを重ねて。(井上・いらはら)

 

〈2F〉
「有意識 無意識 展」
京都芸術祭美術部門実行委員会


2025.7.22(火)~ 7.27(日)

作品制作にあたって我々は、当然のことながら自分が意識して色や形を作っていくと思います。しかしプロセスの中で無意識に色や形が出てくることがあり、それが作品の中で重要な要素であることがあると思います。作り手が今回このテーマを十分に意識して、制作プロセスの中で無意識に出てくる自分がその作品の中で、どういう風に表出してくるのか。そして見る人にはそれがどういう風に映り感じることができるのか。
展覧会のテーマを強く鑑賞者に押し「有意識と無意識」について提案します。(京都芸術祭美術部門実行委員会)

 

〈1F+2F〉
日本版画協会 第91回版画展 ギャラリー賞受賞作家展
― 明日に架ける版表現 ―
磯崎海友 小倉咲枝 長嶋一孝


2025.7.29(火)~ 8.3(日)

私は、依存や中毒をテーマに描くことを通して、その裏側に隠されているものを描き出したいと考えて制作しています。日々社会を生きる中で感じることを反芻させ構築されていくイメージをリトグラフで写し取っています。京都での展示は初めてですが、素晴らしいアーティストのお二方とともに展示できることをとても嬉しく思っています。(磯崎)

私の(あるいは誰かの)ささやかな居場所、日常の象徴であるダイニングテーブルを舞台に、思いにふける一瞬の、とるに足らない日常の、その「側面」を表現したいと思う。水たまり、雨音、芝刈りの匂い。平凡なひとかけらにも濃厚な密度があり、心動かされる何かが宿っていると思う。(小倉)

木口木版画や木版画の技法を使い、モノクローム の世界を展開する。現在、日本版画協会会員として活動中 。近年では自身の死生観やジェンダーについてを題材に独自の視点から社会的、個人的な側面を表現したいと、試みている。(長嶋)

京都市左京区聖護院山王町21-3 TEL:075-771-1011 休廊日:月曜日

2kw gallery

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安枝知美
いる場所と光の量


2025.7.10(木) 〜 7.27(日)
13時―19時(最終日は17時終了)
休廊:月・火・水

人物の表情を描くことによって、日常で抱いた妙で不安な感情や、少しの喜び、描かれた人物の印象を視覚化することを試みています。
顔の肉付きや凹凸に対し、目、鼻、口、首の配置を少しずらすことによって、感情や人物の印象を表現しています。
今回の展示では、背景(人物と背景の距離感や、空間の広さ)を透けるように描くことや、輪郭とわずかな色彩の違いを意識し制作しています。季節や天気、温度も、人物の感情の表現に重要と考えています。

安枝知美

滋賀県大津市音羽台3-29-1 TEL:090-5241-8096 休廊日:月・火・水曜日

Gallery G-77

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渡邉敬介
music Is = music exists
〜風のなか、夢のかたち 呼吸する線。


「船泊り」2025年
紙にアクリル、ガラス絵
72 x 59 cm

2025.6.10(火)〜 6.29(日)
11:00~18:00

本展では、渡邉敬介の最新ドローイング作品を紹介します。京都市内や郊外で描かれた風景スケッチと裸婦デッサンを中心に、紙という媒体を通して制作された作品群です。身体の曲線や遠くの丘のかたちをなぞるその線は、それぞれに豊かな表現力を湛えています。 大きな巻物から小さな紙片まで、線が動きやリズム、存在感となって現れる世界へと観る者を誘います。その線はまるで音楽のように、儚く、確かに、そして生きています。

ぜひ会場にて、これらの作品が響かせる感覚を体験してください。


本展では、線が生きた存在として立ち現れます。息づかいのように、ささやきのように、そこにいた証として。渡辺敬介による最新の紙上作品は、小さな親密なドローイングから大きな巻物まで、多岐にわたります。裸体のスケッチと、京都を中心とした風景のプレネールドローイングという、いわば異なるふたつの世界を往還しながら、そのすべてを貫いているのは「線の身振り」です。線はただ描くのではなく、耳を澄ましながら紙の上を風のように漂います。

これらのドローイングは、記録としてではなく、「見ること」と「感じること」の音楽的な記譜として集められています。裸体のかたちは、枝葉や屋根の輪郭と同じように軽やかな注意深さで描かれています。肩甲骨も丘のかたちも、等しくやさしい手つきで捉えられ、それぞれが繊細なエネルギーを帯びています。

本展では新作の巻物も初公開されます。フランツ・シューベルトの『夜と夢』に着想を得て、動く人物たちの連なりが描かれたこの作品では、音楽の静けさとリズムに寄り添うように、人体が現れては溶け、また立ち上がります。流れる旋律のように画面を横切るこの線は、「在ること」と「移ろい」の詩的な瞑想を思わせます。

風景画もまた、屋外でのドローイングという実践から生まれています。観察を起点としながら、アトリエで再構成されたそれらの作品は、日常の風景を光とリズムの層として描き出します。構造に縛られず、場所のテンポに導かれた筆致は、建築、植物、影、街の断片をひとつの画面に共存させ、即興的でありながら夢のような空間を立ち上げます。

これらの構成は、厳密な写実や遠近法には従いません。代わりに、要素が重ねられ、歪み、浮遊することで、記憶が細部を積み重ねるような視覚的圧縮感が生まれます。作品は視覚の日記のように、個人的な経験と文化的な風景を曖昧に交差させていきます。ある作品には、日本の水辺の都市を思わせる風景が現れ、そこでは歴史と現代、静けさと賑わいが一体となっています。大胆な筆致や透明な重なり、絵の具のにぎやかな配置は、現代の視覚の密度への応答であり、祝祭の瞬間、あるいは穏やかな郷愁を感じさせます。

風景でも人物でも、渡辺の線は制御を求めていません。それは共鳴を探しています。一つひとつの線が触れるような即時性と、時間に寄り添う静けさを持ち、見る者にただ「見る」ことではなく、「記憶すること」と「存在すること」の間の間隔を感じさせます。これらの作品は、見るという行為に立ち返り、知覚が「今ここ」にとどまるための空間をそっと差し出してくれます。

京都市中京区中之町73-3 Tel:090-9419-2326 休廊日:月・火曜日

艸居

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あお


打田翠、心象、2024
陶、H21 × W21.5 × D6.6 cm
写真:今村裕司
画像提供:艸居


シルヴィ・オーヴレ、Blue Pots, 2021
紙にインク、オイル、パステル
H40.5 × W57.5 cm
写真:今村裕司
画像提供:艸居

2025.6.19(木)〜 7.31(木)

会場1:艸居
開廊時間:11:00 - 18:00 休廊日:日・月
会場2:艸居アネックス
開廊時間:13:00 - 18:30 休廊日:日・月

出展作家 : 朝倉美津子、石井亨、打田翠、永楽善五郎、加藤孝爾、上出惠悟、河井寛次郎、熊倉順吉、清水卯一、シルヴィ・オーブレ、ジョン・メイソン、トニー・マーシュ、濱田庄司、白 明、藤平伸、堀江美佳、湊茉莉、宮永東山。(五十音順)

高麗及び李朝時代の青磁器も展示いたします。

艸居:京都市東山区元町381-2 Tel: 075-746-4456 開廊時間:11:00AM - 6:00PM 休廊日: 日・月曜日

艸居アネックス: 京都市中京区一之船入町375 SSSビル3F Tel: 080-9745-8452 開廊時間:1:00PM - 6:30PM
休廊日: 日・月曜日

京都 蔦屋書店

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<5F アートウォール>

 

嶋田里英 ジークレー作品展
「In transit,」


《回る塔景》

2025.7.16(水) ~ 8.31(日)

主催:京都 蔦屋書店

さまざまな都市のシーンを描くイラストレーター、嶋田里英。“移動”をテーマにした本展では、京都タワー展望台からのロータリーの景色や京都駅の空中回廊からの景色を描いた新作のほか、今年4月に開催した海外初となる香港での個展で発表した“トランジット”に焦点を当てた作品も合わせて展示します。移動中にふと目にする光景や何気なく通り過ぎてしまう風景など、作家の視点で切り取った作品は、鑑賞者の記憶を呼び起こし、どこか懐かしさを感じさせるようでもあります。
会場ではジークレー作品のほか、A2サイズのポスターやステッカーセットなどの新グッズ、人気の文具ブランド「DELFONICS(デルフォニックス)」とコラボレーションしたノートなども合わせて販売します。

[本展に寄せて]

飛行機に乗る前、駅のホームで電車を待つとき、ロータリーでバスを探す瞬間。
目的地へ向かう途中の「通過点」には、普段は気づかないけれど、その瞬間にしか見ることのできない風景があります。
前回の香港展では、空港という国際的な“トランジット”の場に焦点を当て、移動の一瞬に宿る高揚感や緊張感を描きました。
今回はその視点を日本国内に広げ、駅やロータリーといったより身近な空間を通して、日々の「In transit,」の瞬間に光を当てています。
通過するからこそ見える景色を、ぜひ作品とともに味わっていただけたら嬉しいです。

嶋田里英

<6F アートウォール>

 

水野遥介 個展
「The hollow gaze」


《hollow gaze》

2025.7.15(火) ~ 8.4(月)

主催:京都 蔦屋書店

水野遥介は、主に人物や人物を含む空間を起点とした絵画を手掛けています。写実的な描写と抽象的な表現の間を揺れ動く水野の作品は、存在と不在が曖昧で、つねに変化し続ける無秩序な世界を表現しています。水野の作品は、視覚的リアリティーを追求するのではなく、イメージの欠如や省略によって観る者に想像の余地を与え、「思考すること」を促します。
本展では、「存在の揺らぎ」をテーマに、新たなモチーフとして人形やマネキンを用いた作品を加えて展示します。見ることも語ることもできないこれらのモチーフは、「人のようで人でない」曖昧な存在であり、「存在しているようで存在していない」状態を体現しています。また、「見られる側」としての自意識を持たず、純粋に見られる対象として存在し続けます。その構造は、水野が作品制作において影響を受けているというフランスの哲学者 ジャン=ポール・サルトルの「まなざし」論にも通じ、他者の視線によって自己が規定されるという不安定な主体の在り方を示しています。水野は本展を通して、私たち自身の存在の曖昧さや危うさを提示します。

[アーティストステートメント]

私は主に人物や、人物を含む空間を手がかりに絵画を制作しています。制作は、デジタル上でのドローイングやイメージのコラージュから始まり、そこから構築される絵画空間は、ひとつの完成された像を目指すのではなく、常に変化し続け、流動的で不安定な様相を帯びています。
画面上ではイメージを意図的に省略・分断することで、現実の連続性を断ち、曖昧で掴みどころのない空間を描き出しています。その断片性は、私たちが生きる世界の不確かさや、自己の輪郭の曖昧さを暗示するものでもあります。
近年は、私たち自身の存在の曖昧さ、危うさに焦点を当てた制作を行っています。

<6F ギャラリー>

 

能條雅由 個展
「過ぎ行く時の傍らで」


《Mirage#83》

2025.7.26(土) ~ 8.19(火)

主催:京都 蔦屋書店
協力:YUKIKOMIZUTANI

能條雅由は、自然の風景から抽出した色とフォルムをもとにしたコンテンポラリーな表現と、箔などを用いた伝統的な日本美術の表現を融合させて、人々の記憶や時の流れといったテーマを追求しています。作品の中に偶然性や現象的要素を取り込みながら、光の加減や色彩による多様な視覚体験を生み出そうとしています。
本展覧会では、自然風景を箔を用いて蜃気楼のように再構築した「Mirage 」シリーズに加え、時の経過がもたらす空間の色調変化に着目した「Flicker」シリーズ、木の年輪をモチーフとして偶然生まれる有機的な形の連続性を描いた「Link」シリーズを合わせて展示します。それらの作品は、鑑賞者それぞれが持つ記憶と結びつき、どこか懐かしさを感じさせます。

[ステートメント]

能條雅由は大学在学中から、社会における記憶(集合的記憶)に関心をもち、鑑賞者にそれを想起させることを志向し、創作から恣意性を取り去るために、写真を取り入れたミクストメディアによる表現方法を選び、記憶のイメージを構成する最小単位として、色とフォルムを写真から抽出しました。
そして、時の経過の表現として尾形光琳の紅白梅図屏風が描いた銀箔を用いた川の流れに閃きを感じ、写真から抽出した色彩の印象をもとにベースとなるパネルにマーブリングを施し、その上に銀箔を用いたシルクスクリーンで写真のイメージを重ねます。
17 世紀の江戸時代に活躍した尾形光琳の川の流れの表現は伝統的な文様となりました。また銀は時の経過に従い酸化し色を変化させることから、時の流れの暗喩となっています。尾形光琳の川の流れのモチーフはヨーロッパに渡り、19世紀末のアールヌーボーなど新しい芸術活動に影響を与え、クリムトの作品「接吻」にもそのモチーフを見ることができます。

YUKIKOMIZUTANI

[本展に寄せて]

木々のざわめきや移ろう木漏れ日、風に揺れる草花やその香り...
刻一刻と微細に変化していく様をファインダー越しに捉えていく。
そこには私が見た世界の一瞬が記録されている。
その切り取られた瞬間に再び時間を取り戻すかのように、偶然性や現象を取り込みながら風景の再構築を試みている。
作品が持つ無機的な構造や素材、周辺環境の影響を受けながら有機的に変化していく図像、それらは調和とハレーションを起こしながら鑑賞者の前に現れます。
漂う空気感と静寂に包まれて、一体何を見ているのか。

能條雅由

京都市下京区四条通寺町東入ニ丁目御旅町35 京都髙島屋S.C.[T8]5・6階
Tel: 075-606-4525 営業時間:10:00~20:00 (不定休)

美術館情報

京都市京セラ美術館
本館 北回廊1F

どこ見る?どう見る?
西洋絵画!
ールネサンスから
印象派まで
サンディエゴ美術館
feat.国立西洋美術館
2025.6.25(水)-
10.13(月・祝)



京都市京セラ美術館
本館 南回廊1F

特別展
民藝誕生100年—
京都が紡いだ日常の美
2025.9.13(土)-
12.7(日)



京都市京セラ美術館
新館 東山キューブ

松本市美術館所蔵
草間彌生
版画の世界
―反復と増殖―
2025.4.25(金)-
9.7(日)



京都市京セラ美術館
ザ・トライアングル

寺岡海
この空の下で
2025.6.17(火)-
8.24(日)



京都国立近代美術館

きもののヒミツ
友禅のうまれるところ
2025.7.19(土)-
9.15(月・祝)



美術館「えき」KYOTO

やなせたかし展
人生はよろこばせごっこ
2025.7.11(金)–
8.24(日)



京都国立博物館

特別展
宋元仏画
─蒼海(うみ)を
越えたほとけたち
2025.9.20(土)–
11.16(日)



細見美術館

広がる屛風、
語る絵巻
2025.5.24(土)-
8.3(日)